生きることなんて、どないもない。Vol.3

眼力さんの守役、服部さんが見た今、昔。暮らすこととは、生きることとは、そして生きることとは。~第三話~

眼力さん 生きることのコツ
京都伏見の清らかな場所 眼力さんの手水は石清水
●第三話●

格が上がる座布団の話

稲荷山の参道を登っていくとそれはそれはたくさんのお社がお祀りされています。大きなお社の前にはたいていお店があって、お詣りの人々がそこでろうそくやお供え物を買えるようになっています。そういったお店の方のことを、お社のお世話をされる「守役」というのだそうです。

眼力さんの守役は、服部さんが代々継いでこられました。服部さんは旧姓を高林さんといい、古くから眼力さんをお詣りされている方々にとっては「服部さん」より「高林さん」の名前の方が馴染みがあると言われる方も少なくありません。

今から一代前にあたる守役、服部さんのお父さん「高林さん」は大変手先が器用な方で、お社を含めお店の修繕は簡単なものなら大工道具を出してきてご自身でされていたそうです。器用なうえに心優しい高林さんは、置物を床の間や玄関に置くときには必ず小さい座布団を敷いてあげていました。置物であっても脚や腰が寒かろうと気遣いされていたのです。

先日、押入れの片づけをされていた服部さんはたくさんの綿をみつけました。それはもう何年も前に布団を新調しようと買っておいたものでした。今となっては使うこともないのだけど、これは捨てるにはもったいない。どうしたらよいかしら…としばし悩んでいると、ふと床の間にある土でできた恵比寿さんの置物が、座布団を敷いてちょこんと座っておられるのが目にとまりました。服部さんのお父さんの習慣が今でも服部家に受け継がれていたのです。

「そうだ!置物用の小さな座布団があれば、誰かの役に立つかもしれない…」

小さな置物用の座布団を自分で作るとなると大変だし、売っているのもあまり見かけませんので、もしあれば何人かでも喜んでくれる人がいるかも知れないと考えた服部さんは、さっそく古くから知り合いだった縫い手さんに座布団のことを相談しました。

ご存知の通り座布団の仕上げは手縫いで仕上げます。ミシンで縫える最近の衣類と違い大変手間隙がかかるのですが、置物用の小さな座布団となるとそれは一層大変です。ところがその縫い手さんはご高齢にも関わらず、眼力さんの力になれるのなら喜んで!と二つ返事でこの仕事を引き受けてくださったそうです。

眼力さんにお詣りで、生き方のきっかけを

服部さんのお父さんが置物に座布団を敷いてあげる人だったことにヒントを得た小さな座布団。その生地には眼力さんの鈴の緒の赤い生地を用い、発想、素材、協力者、全て眼力さんにまつわるものが元となって出来上がりました。

この座布団をお店に置いてみたところ買い求める方が後を絶たず、あっという間に売れてしまいました。服部さんは何よりも、服部さんのお父さんと同じように置物に座布団を敷いてあげたいと思う心優しい人が、今でも多くおられたことが本当に嬉しかったのだそうです。

置物にも心をかよわせ大切に思う服部さんのお父さんと、ものを粗末にすることなく上手く使ってあげようとする服部さん。そんな自分以外のものに愛情をもって接する気持ちを、私たちも大切にしていきたいですね。それができるにつれ人としての「格」が上がるのかも知れません。


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